インプラント治療とは人体となじみの良いチタンを歯のなくなったところに埋め込んで人工歯を装着する治療法で、金属アレルギーの方でも安心して治療を受けることができます。
また、天然の歯と変わらない審美性と、ブリッジや入れ歯などの従来の治療法では困難だった噛み心地が再現でき、歯茎が痩せる心配のない優れた治療法です。
しかし、インプラント治療を受けたいと思っていても、「費用がかかる」「治療期間が長い」という理由から、インプラント治療を諦める方も少なくありません。
また、インプラントの治療前には問診、口腔内検査、X線撮影などを経て、口腔内の状態と全身の健康状態を把握し、正確な診査・診断が必要です。その結果、インプラント治療に不適合な場合があるということもあります。
腎臓疾患
腎臓病の方は免疫力が落ちやすく、そのため傷の治癒が遅くなることがあります。インプラント治療では外科的手術が2回必要で、その際に出血することがあります。
特に重度の腎臓病の場合人工透析を受けていることが多いですが、骨がもろくなっていることがあるのでインプラント治療は不適合です。
他にも細菌が臓器に回るリスクもありますので、人工透析を受けるほど重度の方は避けた方がいいでしょう。
糖尿病
糖尿病の方もインプラント治療が不可能なことがあります。
糖尿病は全身の抵抗力や免疫力が落ちるので歯周病にかかりやすくなります。歯周病はインプラント治療で最も怖い敵であり、重度になるとインプラントが抜け落ちてしまうことがあります。
また、抵抗力が弱くなるので傷の治癒が遅れてしまうため、手術によってできる傷の治癒が遅くなります。
さらに、糖尿病になると虫歯になったり痛みを感じづらくなるので、入れ歯を入れても摩擦や圧迫で歯茎に傷が出きても自覚しづらいなど、インプラント以外の歯科治療でも弊害が多いといわれています。
ただ、糖尿病だから100%インプラント治療できないというわけではなく、血糖値のコントロールが可能であればインプラント治療は可能です。
18歳以下の若い方や妊娠中の方
インプラント治療は小さいお子さまや成長期の18歳以下の若い人は受けることができません。まだ成長が完全に止まっていない成長途中の状態にあるため顎の骨もまだ成長して広がりますので、きちんと計算して埋め込まれたはずのインプラントは成長と共に位置がずれていき、目的とした噛み合わせや歯並びとは違う場所へと移動してしまいます。
20歳前後になれば骨の成長も止まるので、それからインプラント治療を受けることをおすすめします。
また、妊娠している方もインプラント治療を受けることはできません。
その理由は手術後に痛み止めや抗生物質の服用の必要があり、これらが胎児に悪影響を及ぼす可能性があるからです。また、インプラント手術を受けるとなると緊張や不安、痛みなどがストレスとなって流産の原因になることもあります。
インプラントは埋め込んで終わりではなくその後の治療の継続や定期的なメンテナンスも必要になりますので、出産後の新生児を抱えたママにも無理があるように思われますので、卒乳までの間はインプラント治療は避けた方がいいでしょう。
歯周病
インプラントの成功に大きな影響力を持っているのが歯周病です。歯周病は細菌が歯茎の隙間から侵入し顎の骨を溶かしていく病気です。歯周病では歯がぐらぐらになって抜けたり歯茎の炎症などが起こりますが、これはインプラント治療でも起こり得ます。
また、いくらきちんとした手術ができたとしても、歯周病の治療や日々のオーラルケアを怠る方にはインプラント治療をおすすめできません。
喫煙
喫煙する人はインプラントの定着率が悪いという報告があり、喫煙とインプラントには大きな関連があるといえます。
・歯茎の血行が悪くなるため栄養が届かず抵抗力が落ちる
・歯茎に適切な酸素が届かず毒性の強い嫌気性菌(酸素が嫌いが細菌)が増えてしまう
・骨や歯茎の再生能力が低下して傷の治りが悪くなる
・歯茎が線維化(硬くなる)して炎症を外から見つけにくくなる
喫煙は歯周病とも深いかかわりがあるといわれていますので、健康のためにもインプラントのためにも禁煙をおすすめします。
まずはご相談ください
インプラント治療は大変素晴らしい治療法ですが、中にはインプラントができない可能性のある人もいるということを知識として覚えていてください。
ただし、ここでご紹介した疾患や症状がある方でもインプラント治療が受けられない可能性があるということで100%できないというわけではありませんので、このような疾患や症状がある方でもしっかりとカウンセリングを受けて、治療が可能かどうかを確認しましょう。また、自分では病気ではないと思っていても、検査を受けると思わぬ病気が発見される方も多いので、きちんと事前検査を受けてください。